レイトレ合宿10に行ってきました

10月11〜13日に行われたレイトレ合宿10に行ってきました。

レイトレ合宿もついに10回目、コロナウイルスでの休止を挟んで12年目だそうです。 今年の舞台は熱海、初島離れ小島の会員制リゾートホテルという記念大会にふさわしい場所でした。 なんでも常連参加者の身内に会員の方がいて実現したとか。感謝です。

例年より少し遅めの10月の開催で、丁度温泉が心地よくなるくらいの季節でしょうか、などと思っていましたが当日は記録的な猛暑によりTシャツで余裕という気候でした。

東京からは新幹線で熱海、熱海港から船で初島という旅路です。 熱海駅はレイトレ合宿にしては珍しく観光地らしい大規模な建物でした。 そして駅から少し離れた場所にある熱海港からリサとガスパールコラボデザインの船で初島へ向かいます。

船ではデッキに上がりました。 動き出すと海鳥が大量についてきて、何ごとかと見ていると観光客がスナック菓子を投げ与えていました。

特に注意書きなども見当たらなかったので歴史のある観光地ならではの光景という感じでしょうか。 飛行中の海鳥の資料が欲しい方には良いかもしれません。

初島には10分程で到着しました。 港からは送迎バスに乗ってすぐにホテルに到着です。 建物に入ると中央が吹き抜けで回廊になっているタイプの建物でまず驚きです。

部屋割りは私とkiNaNkomotiさんとたたさんの3人。 チェックインして部屋に入ってみると4人部屋のようでしたがとても広い。 調度品も高級感があり、窓の外はオーシャンビュー。おまけに寝室が2つ。 そしてどこまで土足で入って良いのかわからない😇
なお寝室にスリッパがあったので基本土足でOKだったのでしょう多分。

さてチェックインの後はすぐにセミナー開始です。 セミナー会場の前には行燈が立っていました。 ちなみにセミナーの部屋も見事なオーシャンビューでした。

開会の挨拶から自己紹介。最近はPythonでパラメーターを上げ下げするお仕事をしているという方が数人いて時流を感じました。 また今回は初の参加者20人越えとのこと。 従ってセミナーは全24コマ。何かの学会?という声も聞かれた驚きのボリュームです。

最初のセミナーは下のラインナップ。 公式に一覧と資料へのリンクがあるので敬称略でタイトルだけの紹介にします。

  • Gaussian Splash : うしお
  • ほたるのひかり : Kugi
  • Real time neural appearance model : somatic cell
  • ARMでの実装と最適化 : ogaki
  • RTPMについて : pocol
  • つぶやきGLSL解読 : gam
  • 知られざるNaNの世界(あとInf) : hole

Gaussian Splatingに機械学習でのBRDF近似、Appleシリコンで一気にPCに進出してきたARMと、初端から流行りをおさえた素敵な組み合わせでした。 NaNとInfの話もNaN Boxingという器用な使い方があると知り、仕様を把握するのは大事だなと思いました。

そしてセミナーの最後になぜか配られるケミカルライト。 照明を落としてライトを振りつつNaNの歌Silent NaNの鑑賞となりました。なんだこれは。

セミナーの後は夕食です。 中華のコース料理で、(ろくに行ったこともないですが)中華というと回転テーブルみたいなイメージでしたが個別に盛られたお皿が出てくるタイプでした。

夕食の後は大浴場でお風呂を浴びて就寝。 と言いたいところですが、実は今回なぜかスケジュールが壊滅していて私はこの時点でセミナーの資料ができていませんでした。 プライベートが特別忙しかったりした覚えもないのですが…

というわけで夜更かしして現地での資料作りとなったのですが、なんと同室のたたさんもkiNaNkomotiさんも全員同様にPCを広げ出すという始末。 レポート前の学生の集まりかという感じでしたがしばらくしてたたさん、完徹にならない程度に私、という順で就寝。 kiNaNkomotiさんがいつまでやっていたかは本人のみぞ知るところです。

2日目は朝7:30から朝食だったので早めに起床。この日もよい天気でした。

朝食は和食で、卓上のコンロで魚を焼くという趣向付き。

朝食を済ませたら2日目のセミナー開始です。

  • 初心者が四ヶ月でレンダラーを実装してみた : hamity
  • ReSTIRの数理と実装 : yamcyawiz
  • レイトレーシングとXR : kiuchi
  • レイトレーシングで解ける問題 : ishiyama
  • scan with decoupled lookup & onesweep radix sort : shocker
  • Overlapped multiview rendering : eclmist

ReSTIRの話はどの要素の調整不足でどんなアーティファクトが出るのかという実例付きでとても参考になりました。 またXRや今時のGPUでのソートの話など面白いものがありました。

午前の部はここまでで昼食。 と言いたいところですが前述の事情があるので私は部屋に戻って資料の最後のまとめ。 ホテルの都合で2日目は部屋が変更になっていて、午前のセミナー中に荷物の移動が済んでいた変更後の部屋へ。 前日より1階下がったのですが変わらず海の眺めが最高の部屋でした。 資料のまとめと言っても夜に大体終わらせたので誤字の修正などの確認です。 しかし終わった後は中途半端な時間になってしまい、どうしたものかとホテル内から港の方まで行ってみましたが短時間で手軽に行けるところはなさそうだったので売店で軽く食べ物を調達しました。

余談ですがこのホテルのアミューズメントスペースにはゾンビ、ニンジャ、パーティゲームガンシューが3タイトルも設置されていて熱いです。

キャビネットの奥に窮屈そうにCRTが収まっている往年のガンシューも良いものです。

さてお昼の後は午後のセミナーです。

  • 音線法 : たた
  • Projective Geometric Algebra 入門 : kiNaNkomoti
  • GPU Hash Table について : nishiki
  • Light Samplerの比較 : elk
  • 0x5F3759DF : ykozw
  • 結局嬉しくなかったレイとAABBの話 : Pentan

Projective Geometric Algebraは興味深い内容でした。 なお後でログを漁ると実は自分でもXで始祖のポストをRPしていたことに気付いたりします。
0x5F3759DFは有名なRSQRTの近似の話ですが、今ではRSQRTSSのほうが高速と書かれていて少し寂しさも感じます。

私のセミナーの資料はこれで、シンプレックス法でAABBとレイの交差判定ができるのでは的なものです。 正直あまりまとまっていない資料なのでそのうち実装例を作っておきたいところです。

セミナーの後はレクリエーションがありました。 今年のクソゲームは500ピースのハードコアCrytek Sponzaジグソーパズル。

部屋ごとの対抗戦で制限時間内にどれだけ組み立てられるかを競います。 左の垂れ幕のあたりの周波数の高めな部分は比較的わかりやすいので、その辺りを攻めるチームが多かったです。 流石に完成できたチームはなかったので、5個以上(?)のクラスターを有効として連結されているピースの数が一番多かったチームの勝利となりました。 不覚にも優勝チームがどこだったかメモしていなかったのですが、優勝チームにはコーネルボックスジグソーパズルが贈られました。 なおハードコアCrytek Sponzaジグソーパズルは各部屋へのプレゼントとなり、私の部屋ではたたさんがジャンケンでの争奪戦で押し付け勝ち取りました。

さて、お楽しみの本戦です。

今年は22個のレンダラーが集まりました、という挨拶から始まりました。 続けてそれぞれのレンダリング結果のお披露目とプレゼンを行います。 今回は静止画のレギュレーションもあったのですが、動画作品が圧倒的多数という結果でした。

船を借りてドローンを飛ばして撮ったという行動力が強すぎるうしおさんのエピソードや、gamさんとSamuel HuangさんがRay Portalでネタかぶりするという珍事、Yoshi's Dreamさんが音までレンダリングするという思いがけない作品を出してくるなど今年も面白い作品が目白押しでした。

なお私のものはこちら。

いやコンセプトとしては割と真面目なネタなんですけど、作品としてはやはり職場からの帰りの電車でClip Studioのアニメ機能で描いた素材で滑り込み入稿だったので、などと言い訳するまでもないですね。
流石にこのレベルの作品だと提出時にしんがりは某が引き受けた!という気分になりますが、出せたから偉い!という気分にもなります。

本戦が終わったら投票の時間とあわせて夕食です。 2日目の夜は和食で、これまた豪華なコース料理でした。

食事の後はお風呂と就寝で2日目が終了です。

3日目の朝は前日より早く、7:00から朝食でした。 バイキング形式でバラエティ豊かな朝食でした。

そしてまだセミナーがあります。

  • 音空間のレンダリング : Yoshi’s Dreann
  • 1/60秒の世界で単位と向き合う : udemegane
  • Hierarchical sample warpingの精度の調査 : Zin
  • リー代数で三次元回転 : pheema
  • 小さいレイトレーサー(物理)を作ろう : hagat

リー代数の回転は覚えておきましょう😊
組み込みマイコン(arduio)でレイトレーサーをつくる話をしたhagatさんは、セミナー後に希望者に実物をプレゼントされていました。

また、ここにもありますが今回のセミナーではいくつか音に関するものがありました。 しかし意外と内容が被らずそれぞれが補完しあうようになっていました。 音は可聴な周波数領域が広く、回折が無視できない低音ではレイトレは不適で有限要素法にしたほうがいいとか、一方で高音では解像度を上げないとシミュレーションができなくなるのでレイトレが生きてくる、などなるほどという感じでした。

これで全てのセミナーが終了となりました。 セミナーにも賞があるのでこのタイミングで投票です。

この後はチェックアウトをしてから閉会式で結果の発表です。

まずセミナーのベストプレゼンター賞はNaNの話をしたholeさんでした。
知っているようで知らない話で面白いプレゼンでした。

そして本戦の1位はShockerさん。
レイトレらしさあふれる見事な作品で、久しぶりにレイトレの良さを再認識したような気分になりました。

2位はOgakiさん。
ファーやスフィアマップの地面補正にシャドウキャッチャー、といった実用的な方面に注力していた印象です。

3位はSamuel Huangさん。
Ray Portalを生かした完成度の高いシーンでした。

なお私の順位はhamityさんと同点で21位。 景品としてしらすの漁師煮をいただきました。 普通に現地のお土産な気がしますが美味しいやつです。

閉会式が終わると解散で、帰宅組は港へ向かいました。 帰りも行きと同様、船に乗ると海鳥が追いかけてきました。 ただよく見るとトビが混じっていて、島からある程度離れるまでついて来ていました。

そして熱海港から熱海駅へと移動して新幹線で帰宅となりました。

今年は人数も多くなり、セミナーのボリュームもかなりのものでした。
毎回書いている気がしますが作品のレベルも高くなり頑張らないとなという気分になります。
今回のネタは温めていたものにそろそろ手をつけるかという感じで始めたものでもあるので、次はもう少しそれっぽいものにしておきたいものです。
例年にも増して暑くて熱いレイトレ合宿でした。